Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「小百合!」
私は急いで後を追って、玄関に座る小百合を捕まえた。
「あ、あうっ! あおい、ちゃん……。あおいちゃんがダメって言うなら、私もう一回──」
「違うよ、あしよ足!」
多少庇いながらではあるものの、スムーズに歩いていたのだ。
「あっ、あし?」
「そんなに慌てて歩いて平気なの?」
そこまで言ってやっと的を得た小百合は、「ああ!」と言ってポンと手の平を叩く。
「まだ、少し痛いけど、大丈夫です」
と、アピールするようにスッと立ち上がって二三歩、歩いてみせた。
小百合が歩けるなら武志の負担も減って昨日よりスムーズに移動できる。
救助のヘリも来ているし、朝から幸先がいい。
そこへ。
「準備できた~?」
と、さらに【幸】が体中からにじみ出ている澪がスキップで登場。
昨晩、二階の部屋を借りて武志と二人っきりで一夜を過ごした澪は朝から超の付く上機嫌だった。
「2人ともどうしたの? 口開いてるよ」
「「へっ!?」」
思わず間抜けな声を出してしまった……。
その晴れ晴れとした顔を見れば、澪の試みが成功したのは一目瞭然なんだけど、色々と質問したい好奇心と、今はそんな場合じゃないって理性が頭の中で戦って、ポカンとしてしまったのだ。
「もう、しっかりしてよね! さあっ、頑張って逃げるよ!」
私達の肩をポンポンと叩いて、澪は外へと出て行く。
私は、おそらく同じことを考えていたであろう小百合と目を合わせて苦笑い。
「行こうか」
「は、はい」
すべては終わってから訊けばいい。
私は緩んだ気持ちを引き締めて、玄関を開け放った。