Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
◇
どうしてこんなことに……。
「あおい、走れ!」
純也が活をいれるような怒鳴り声を上げ、私の手を強く引く。
倒れることを拒む本能が、両足を交互に前へと誘う。
穏やかな午後には親子連れやカップルで賑わう平和な親水公園が、今は血と肉と腐臭に溢れていた。
「クソッ!」
前を塞ぐゾンビを純也が木刀で薙ぎ払う。
吹き飛んだ死人は、水しぶきを上げて人工の小川へと倒れ込んでいく。
「ちくしょう! ちくしょう!」
真っ赤に充血した純也の瞳からは、大粒の水滴がこぼれ落ちていく。
どんなにつらいことがあっても、どんなに痛い思いをしても泣いたことがない純也。
そんな純也が初めて見せる涙……。
それを見てようやく、止まっていた私の時間は動き出した。
どうしてこうなってしまったのか……。