Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
最初は順調だった。
柏木先輩の家を出た私達は裏道を陸上競技場へと進んでいた。
隊形は昨日とほぼ同じ。変わったことと言えば、武志が小百合を背負っていないことと、澪が手ぶらなこと。
小百合は自分の足で歩いているし、澪が手ぶらなのは、バックに入っていた予備の矢を紫音先輩が補充して空になったからだ。
昨日、裏道では殆ど姿をみなかったゾンビも数は増えていたけど、日本刀を手にした柏木先輩の敵ではなかった。
一度に3体現れてもあっさりと倒してしまい、純也は「やっぱりすげーな」と心底関心していた。
十分に休息をとったこともあってか、緊張はしながらもみんなの足取りは軽い。
難なく陸上競技場の手前にある桜並木やバーベキュー場も併設された親水公園にたどり着いた。
この中を通り抜ければ、後は公道を一本挟んで競技場。
左右に広がる芝生や木々を横目に、中央の舗装されたメイン通りを進む。
そんな時だった。
公園の中程を過ぎて、右手に水遊びのできる噴水が見えた時、澪がそれを見つけたのは。
「あれって……」
噴水から延びる四つの小川のひとつ。その先に5歳ぐらいの少女が水に足をつけてしゃがみ込んでいた。
昨日の混乱で親とはぐれたのだろうか?
公園の中ではまだゾンビに出くわしていないから運良く一人で逃げ延びたのかもしれない。もしそうなら一人にはしておけない。
それを悟ってか、
「子供だよ!」
澪が走りだす。