Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
そして、無情な現実はさらに私達を追い立てた。
小川の先にある雑木林から大量のゾンビが姿を現したのだ。
おそらく、さっきの澪の悲鳴を聞きつけたのだ。
いつのまにか隣にいた純也が警戒の声を上げる。
「来るぞ!」
しかし、武志は動こうとしなかった。
それどころか、澪を立たせようとした私を手で制止する。
「おい、武志! 早く澪を俺の背中に!」
純也が苛立って澪に手を伸ばすと、それさえも振り払った。
そして、
「俺を噛んでくれ」
と、澪の前に腕を差し出したのだ。
「たけ、し……?」
「なに言ってんだお前!」
純也が武志の胸ぐらを掴む。
だけど、武志は冷静だった。
「澪はこのままだとゾンビになる。だけど、一人でどこかに置いて行くことは出来ない」
「てめえ! 意味分かって言ってんのか!」
「ああ……。俺は最後まで澪と一緒にいる」
「ふざけんじゃねえ!」
「ふざけてはいない……。純也、もしお前が俺と同じ立場になったらどうする」
「なっ!」
「きっとお前も同じことをするはずだ」
「……」
「純也! 前!」
接近していたゾンビが怒号に吸い寄せられ大きく口を開けた。
純也は前に出て、それを木刀で力任せに押し返すが、その横からさらに別のゾンビが純也の腕を掴む。