Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~

純也はそれを素手で掴み返し、一回転してゾンビを放り投げた。


その隙に澪を抱え上げた武志は、私達から距離をとっていた。


「純也! あおい!」


そして、わざとらしく大声で叫び、


「悪いな! 俺はお前達より澪を選ぶ!」


武志は競技場とは反対方向に走り始めた。


半分のゾンビはその後を追う。


一瞬のことに、私にはなす術がなかった。
いや……時間があったとしても、私には止められなかっただろう。




…………澪。


…………武志。






去り際に見た澪は、とても穏やかでやさしい表情をしていた。


私がそう思いたかっただけかもしれないけど、そこには愛されることの喜びが垣間見えた、そんな気がした。



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