Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
「小百合! しかっり」
「は、はい」
これまでとは比較にならない血の臭いの中をひた走った。
門をくぐり抜け、競技場施設の入り口を目指す。
「きゃああああ!」
「うわあああっ!」
すぐそこで、事務服姿の女性がゾンビに頬を噛み千切られ、ツナギを着た男性が腹を喰い破られている。
少しでも気を抜けば、一瞬にして死人の仲間入りだった。
先頭を行く柏木先輩は、最小の動きで邪魔なゾンビの首を刎ねていく。
怖いぐらいに強くて速い。
「純也くん、左!」
「おうっ!」
後方の紫音紫輩は、人とゾンビが密集しすぎていて弓を使えない代わりに指示を出し、純也がそれに応えてゾンビを退けていた。
武志に食ってかかった時に弓を落としてしまった私は、身軽になったはずなのに、先輩を見失わないように着いていくのがやっとだった。
あっという間に、白いシャツは血と汗でベッタリと濡れていく。
「あっ!」
「うぶっ!」
急に立ち止まった先輩の背中に、小百合と一緒に顔をぶつけてしまう。
「痛いですぅ……」
小百合は鼻の頭を赤くして涙目になっている。
かなり痛そうだ。
私はおでこだからまだましだ。
「どうしたんですか、先輩?」
なにがあったのか、あおでこを擦りながら、見上げると柏木先輩が前方を指さす。