Summer of the Dead ~サマー・オブ・ザ・デッド~
そこには、破壊された施設入り口に殺到する人々の集団があった。
「……あそこを、通るんですか?」
小百合が怖々と聞く。
「どけっ! コラッ!」
「痛い、押さないで!」
「ぐはあっ、この野郎!」
私は乗ったことがないけど、まるで満員電車に強引に乗り込もうとするような、そんな状況だ。
「行くしかねえだろ!」
後ろから純也が声を張り上げる。
「雅くん急いで!」
紫音先輩の焦りも伝わってくる。
人々とゾンビが殺し合う真っただ中だ。いつまでも立ち止まってはいられない。
「手を出して」
「あ、はい」
言われるままに差し出すと、柏木先輩が私の手をしっかりと握り締めた。
見た目は細く見えるのに、力強くて温かかった。
「離さないで」
「はい」
私はもう一方の手で持っていた小百合の手を握り直し、三人で手を繋いだ状態で混乱する競技場施設の入り口に押し入った。