優*雪
壬生寺にて
翌朝
朝稽古にも、朝餉にも
沖田は姿を現さなかった
土方から事情を聞いた永倉は
部屋にもいない沖田を懸命に探していた
その頃
屯所に殿内の訃報が入った
永倉は、いつも能天気な沖田が
なかなかみつからないことに若干焦り
屯所を探したがいなかった
沖田は壬生寺の裏側にいた
永倉が沖田に声をかけようとしたが
沖田の前に優太が走って来た
永倉は反射的に隠れた 意味はない
優太が来たのは、
殿内の訃報と沖田が姿を見せないことで
ーー沖田が斬ったーー
そう悟ったからだった
沖田はニコリと笑い、優太を見て
「こんにちは」 と言った
バシーン!!
優太が、沖田の頬を叩いた音だった
永倉は目を丸め、二人をみていた
「最低ですよね 仲間を斬るなんて…」
自傷するように沖田が呟く
その言葉を否定するように
優太は沖田の背中に手を回した
縁側に座っている沖田を抱きしめる格好
沖田は優太の肩越しに見える景色が
歪むのが分かった
優太から背中をトントンと撫でられ
もう涙を抑えることができない沖田は
優太にしがみつくように涙を流した
その様子を見ていた永倉の心臓は
ドキッと音を出すくらい高鳴った
永倉が初めて人を斬った時
同じようにしてくれた友と優太が重なった
逃げるようにその場を離れ
土方の部屋にきた