優*雪


夜、御所に入り、影朗と会う
用事がすぐ終わった


兄上に会いたい…



兄上には、優菜を死んだことにするとき以来 会っていない


兄上は、俺を可愛がってた
東宮にするとまで言ったくらい


母上がなくなった後
女として生きられるように優菜と名づけ
「生まれかわれ」と言ってくれたっけ…


結局、嫌で逃げた


忍として御所で再会した時、責めることもなく、喜んでくれて


あの刀をくれた


「男として一人前になれ!」


兄上がそう言ってくれたから
俺は神咲の総頭首になれた

女で二つの組に属することも珍しい

二つをまとめる頭首は

簡単なことではなかったが


仲間に恵まれた



優菜を死なせたいとお願いした時


「父上のつけた名前だけは、残せ!」


といわれた



〝 優の宮雪子内親王 〟



母上の名前が 小雪 だから雪のつく名前

俺の中にある残された女の名前

雪子になることはないけど

兄上と約束したからでもなく

俺もこの名前だけは、残したかった



思えば生まれたときから

男と女の二つ名前があった


父上と会うときは女だった
母上といるときは男だった



父上も兄上も、毎日のように会いにきてくれた


会いたいな……


うー。

どうしょ。 ちゃんとお別れも言いたい


今回の件が片付いたら、会いにこよう


そうしよう……








< 232 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop