優*雪

永倉の過去

俺が十歳の頃

道場でいじめられていた

華奢で力がなくて剣術が上達しなかったから…


ある日、近所に蕎麦屋ができた
同じ歳の子供がいるらしく、仲良くするように親に言われた
それが〝まこと〟で、俺たちはすぐに仲良くなった
しばらくして、まことのいとこが親が亡くなったとかで、引き取られた。名前は〝雪之介〟俺より、五つ年下

俺たちは毎日遊んでいた

二人と遊んでいると、体力がついて、剣術が上達するようになった
いつの間にか、いじめられる事もなくなった

とにかく、二人といると楽しくて
いつも大笑いだった

十五でまことが奉公にでてからも
雪とはいつも一緒だった

まことには、それきり会ってない

俺が元服して、脱藩してからも一緒だった
刀を振り回して
暴れまわる酔っぱらいを…

初めて人を… 斬ったとき…




怖かった

手に残る感触が気持ち悪かった


でも、気持ちを抑え、無理に笑った

雪は、優太が総司にしたように…

俺を叩いて、抱きしめてくれた

泣くだけ泣いてすっきりできた


なのに…


「刀を持たない雪に、俺の気持ちは、わからねぇだろ! 優しくするな」


なぜか、雪を突き放してしまった


家に帰ってから、後悔した
雪はなにも言わなかった
雪の、苦しい表情が頭から放れない

朝、謝りに行こう


そう、思ってたのに

夜中……

「火事だぁーーー!!」

外が騒がしかった
火消しの手伝いをしようと外にでた

燃えていたのは…蕎麦屋だった


立ったまま動けないでいる俺に

「新八!落ち着いてきくんだぞ!」

近所のおっさんが

「三人共、亡くなったそうだ」







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