優*雪

老人の家

随分と町を外れた

古びた家の前で、優太がとまる

「二人とも、中へどうぞ」

沖田は、家の中から二人とわかったことに驚いた。 そんなに足音たてて歩いていない

優太は、無言のまま中に入る


「失礼いたします。」
沖田は、挨拶をした

中には、目を閉じたままの老人がいた

「お座りなさい」

優太は座らずに、お茶の支度をする

「はじめまして。沖田総司と申します」

「はじめまして。儂は神咲 新(カンザキ アラタ)と申します」

目を開け、沖田の反応を伺う


「忍ではない、貴方が優とどこで?」

沖田は壬生浪士組の事を話た

「優太と名乗っておるか…」

沖田は永倉の話を思い出した

「優太じゃないんですか?」

「こちらでは、優だ」

「だから、神咲の方は優と呼ぶのですね」

神咲の忍を沖田が知ってると確認した老人は続ける

「優は忍の名とも言える
神咲は特殊な一族でな
神咲の中でも流派が二つある
優はそのどちらにも属していた
一つは抜け身になったと先月聞いたから
本来は優ではない」

「雪…ですか?」

沖田は恐る恐るきいた
本当は、優太から聞きたい話だが…

「優から聞いたか?」
「いいえ」

「なら、知らぬふりでいてくれ」

それは、優太が雪之介であると言われたも同然
沖田は戸惑う


「神咲の忍は三つの人格を持たされる
しかし、優は儂の知るところで五つの人格がある。他にもあるやもしれん
大抵三つで精神を病む
優は子供の頃から、自分の事を考えることができぬ故、月に一度、儂の所ですべての人格を休ませている」



「だが、抜け身の者と仕事以外で接する事は掟破りになる
それでも儂を頼ってくれることは嬉しい
ところで…沖田君は、どうしてここに?」

沖田は、優太が倒れたこと、付き添いで来たことを伝える

「沖田君、これからも、優のそばにいてくれないか?」

「そのつもりですよ?」

「儂の役を君に頼みたい
優のどの人格も受け入れ、名前を呼ばずに会話するだけなんだ」







沖田が返事に困っていると、お茶を三つお盆に乗せて優太が戻ってきた

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