マイ リトル イエロー [完]
すれ違い
“お前浮気されてんじゃねーの?”
帰宅し料理を作り終えて1人で聡真さんを待っていると、さっき西野君に言われたことがじわじわと蘇ってきた。
録画していたドラマを観ながら、私はソファーの上で体育座りをしている。
浮気なんて考えたことも無かったし、私は職場での聡真さんを噂でしか知らない。どんな風に部下に指示をして、どんな風に仕事をして、どんな風に人と接するのかを、私は知らない。
聡真さんは女の子には優しい、ということだけ、チラッと聞いたことがある。
それが真実なら、聡真さんが結婚すると言った時、オフィスから悲鳴が上がった、という噂にも頷ける。
私は、体育座りをしたまま、ころんと横に倒れた。
ローテーブルに置いてある菜の花畑の写真が、90度傾いた。
今日作ったメニューは、コンソメジュリエンヌスープに、春野菜のペペロンチーノ、トマトとモッツァレラチーズのカプレーゼ、、チーズと林檎のココット焼き、デザートにバニラヨーグルト苺のコンフィチュール添え。
どれも聡真さんの好きなメニュー。
聡真さんのことだけを思って作った。
もし聡真さんのことを思って料理を作っているのが私だけじゃなかったらどうしよう、なんて考えが頭に浮かんだ。
「……やめよ。あほらしい……」
考えたら本気で落ち込んできた。
私は体勢を起こし、スマホで写真投稿型SNSアプリを開いた。
今日作った料理や、旦那との旅行、我が子とのほのぼの写真……。
ほとんど見る専門のアプリだけど、かなり暇つぶしにはなる。私は片っ端から知り合いの写真をお気に入りに登録して、画面をスクロールした。