マイ リトル イエロー [完]

「え」

と、その時だった。

聡真さんが一人の女性と仲睦まじげに飲んでいる写真がタグ付けされていた。しかもその日時は、たった今。

“嘉藤美紀子さんは、久城聡真さんと一緒です――23分前”。

待って。落ち着け。私は直ぐに心臓の真上付近を片手で撫でて、いくつもの理由をあげて自分を落ち着かせようとした。

聡真さんも、彼女もスーツだし、付き合いってものがもちろんあるんだから。

私ももう大人なんだから、こんなことで一々動揺しちゃいけない。わかってる。

「やだ……」

――――でも、今回はタイミングが悪かった。

西野さんにあんなことを言われて、ちょうど不安になっていたこのタイミングで。

久々に聡真さんとご飯を一緒に食べられると喜んでいたこのタイミングで……。

……見たくなかった。こんなもの。

見なければこんな気持ちにならずに済んだ。こんな醜い感情、生まれずに済んだ。

「はやく帰ってきて、聡真さん……っ」

私は、クッションを抱きしめて彼の名前を読んだ。

録画していたドラマはいつの間にか終了していて、秒針の音がやけに耳についた。

テーブルにある明るい黄色を、今は視界に入れたくなくて、私はクッションに顔をうずめた。


……無音の部屋で、ひたすら涙をこらえて、ゆっくりと時間が過ぎた、40分後。

ガチャッと、ドアが開く音がして、私は顔を上げた。

「……うおびっくりしたっ、テレビもつけないでどうしたんだよ、花菜」

「おかえりなさい」

「……ただいま、どうした? 具合悪いのか?」

リビングに入ってきた彼は、ソファーに蹲っていた私を見て、少し心配そうに声をかけた。

私はクッションをソファーに置き、すっと立ち上がってキッチンに向かい、もう冷え切ったスープを火にかけた。

いつもは聡真さんのジャケットを預かって、ご飯とお風呂どっちが先? って聞くのに、何だか今は目が合わせられない。

聡真さんが浮気をしていると決まったわけじゃないのに、ただの私の被害妄想の可能性の方が高いのに。

……駄目だ。気を紛らわせるために何か話さなきゃ。

何か――――……


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