マイ リトル イエロー [完]


――『聡真さん、菜の花の花言葉って、“小さな幸せ”って意味なんですよ』。

花菜のあの時の笑顔が、黄色い菜の花畑と共に思い浮かぶ。

花菜、俺はちゃんと、気づけたかな。

花菜の言ってる小さな幸せってやつを、ちゃんと理解できたかな。

今、俺の目の前で瞳を揺らしている君が、怖いくらいとても尊くて愛しいよ。

「私、聡真さんの為に、美味しいご飯をこれからも作りたいです……」

長い沈黙の中やっと呟いた台詞がとても花菜らしくて、俺はもう一度プロポーズしたかのような緊張感から一気に解放された。

「聡真さんに、美味しいって、言って欲しいから……っ、これからもずっと」

「花菜」

後頭部に手を回して、目いっぱい気持ちを込めたキスをした。

花菜のサラサラとした髪を指の間に滑らせながら、唇の感触を味わうように何度も優しいキスをした。

時折漏れる吐息すら愛しい、これ以上どうしたらいい、君が愛しい。

「聡真さん……」

キスをし終えると、花菜が少し照れくさそうに笑った。

そんな彼女が愛しくて、額を当ててゆっくり目を閉じた。

目の前に花菜がいる。それがこんなにも自分の心を安定させるなんて、離れてみなければ知らなかった。

「そ、聡真さん、なんか凄く額熱くない……?」

暫くして異変に気付いた花菜が俺の額に手を当てた。

「いや、それがどうやらもう限界らしい……」

「……え、ちょっと、大丈夫!?」

「風邪移したらごめん、花菜……」

「きゃーちょっと待ってベッド移動してから倒れて!」

花菜の笑顔を見たら一気に力が抜けて、俺は花菜の肩に顔を埋めて寄り掛かってしまった。

花菜は慌てた様子で俺をベッドまで引きずり歩かせ、なんとか横たわらせてくれた。

そういえば忘れていたけど、今高熱があるんだった……。

柔らかいベッドの上に寝転がると、少しだけ呼吸がしやすくなった。

「大丈夫? 今着替えを持ってくるから、あ、あと体拭くタオルも……!」

絶対に悲しい思いをさせない、なんて宣言しておいて、既にこんな風に心配をかけている自分が情けなくて仕方ない。

俺は、ベッドから離れていこうとする花菜の腰に腕を回した。
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