君が教えてくれた空
「ただいま。」
「おかえりなさいませ。お嬢様。
大丈夫でしたか?
お出かけになるときは言ってください。
もう3月とはいえ歩いてお出かけになるなんて、
風邪を引かれては困ります…
お送りすることくらいはしますのに。」
「…そうだね。心配かけてごめん。
あの人達は…うんん。なんでもない。
部屋にいるわ。」
「お嬢様…」
ここには“おかえり”なんて言ってくれる親はいない。
わかってはいるのに、虚しいな。
さっき優しい言葉を掛けてくれたのは志摩さん。
たぶん50代くらいの歳の、私の執事。