私を惚れさせて。私の虜になって。
「私、水変えてくる」

松木が持ってきてくれて、自習室の隅に隠している洗面器。

その中に水を入れて、氷を入れて、塩を入れて。

その中に漬けたタオル。

その中にさらに保冷剤を入れて。

「あ、いーよ。俺行ってくる」

「いいって」

ヌルくなった洗面器を持つと、

「いいっつってんだろ」

私の腕を掴んで、

無理やりそれを持って、行ってしまった。

「…、ありがとう」

絶対聞こえてないけど、そう言った。

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