私を惚れさせて。私の虜になって。
雨音を絶やさない窓から真っ暗な空を見つめていた。

ぼけっとしていると、乗り換えの1つ前の駅に着く。

だから私は立ち上がる。

「…おーい。起きて」

なんとなく松木のほうから声をかける。

「おーい?松木?ねぇ、もう降り…」

松木を叩こうと伸ばした手。

なぜか、それは松木に掴まれている。

「え?」

起きてたの?てか、なんでこんな…。

「…パワー」

なんとか聞き取れるぐらいの声で言う。

「は?パワーって…」

いつの間にか、目が開いている。

「キス」

「はぁぁぁ? 」

「しっ」

意味、分かんない。

何でキスなんて。

「ちょっとだよ」

そう言った松木は本当にちょっとだけ、私の唇に触れる。

「ほんっと、スキありすぎ」

笑っているのは松木だけで、私はきっとゆでだこだ。

「おーい!まぁー!起きろ!置いてくぞ!!」

松木はもう何事もなかったかのように、まーくんを叩き起こしてた。

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