私を惚れさせて。私の虜になって。
私がそう言うと、松木が少し笑ったのが傘の隙間から見えた。

ドキッとしたりなんかして。

「どしたの。顔赤い」

まーくんは空気を読めない。

「湿気が」

「それって関係あんの?」

「ある」

多分、違うけど。

「へぇ」

「だから振り向くな。雨がかかる」

「もー、すがちゃんこっち来い」

決して大きくも広くもない道は、歩いてる順番なんて変えられない。

「無理だよ」

しかも、3人ともりっぱな傘をさしている。

「行けよ」

まーくんはわざわざ傘を閉じた。

「え、濡れるよ?なにしてんの?」

「早く行けっての」

怒った声を出しながらまーくんは後ろに行く。

私も傘をすぼめて前に出た。

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