私を惚れさせて。私の虜になって。
下を向いて、誰とも目を合わせないでその場を離れようと踵を返す。

目の前には、ヨレヨレになってしまったズボン。

大きく『松木』とかかれた上履き。

「………」

何をしに、ここまで。

おかわりとか、アリなわけ?

「全部取れた?」

「…取れたよ」

何にも、知らないふりをして。

「ん。戻ろ戻ろ」

ポケットに手を突っ込んで私の前を歩く。

「まじ男好きー!」

「きもー。可愛くないよぉー」

そんな声は、きっと、気のせいだよね。

< 238 / 489 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop