私を惚れさせて。私の虜になって。
なんとか降りれた。

「次まで後1分だけど」

乗り換えには結構時間がかかる。

歩いて1分でなんて、行けない。

「…走るか」

走りたくもないなんて、わがままかな。

「来れるか?」

私の手を引いた。

「うんっ」

頷いた瞬間に、2人とも走り出す。

「…うっし」

駆け込み乗車もいいところ。

「良かった」

いつもはすぐに離れてしまうのに。

いつまで、手を握っているんだろう。

「菅原、あそこ」

まーくんが指差した先には、ひとつだけ空いている席があった。

「空いてんじゃん!」

喜んでそこに松木が向かう。

そのまま、座るように私に促して、

手を離した。

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