私を惚れさせて。私の虜になって。
一気に手持ち無沙汰になって、

どうしたらいいか、わかんなくなる。

「座れよ」

やさしく、私の肩を押して、

席に座らさせてくれた。

「長いからな」

なんて言っても、30分もないよ。

そしたら、家に帰っちゃうんだよ。

もっともっと、長ければいいのに。

「なぁ、着いたら、どうする?」

ヒソヒソと松木に話してるつもりだろうけど。

「別に普通に」

「普通って何だよ」

「うるせぇなぁ。普通に行くって」

行くって。

どこによ。

< 297 / 489 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop