私を惚れさせて。私の虜になって。
「そういや、着替えある?」


ご飯も終わっちゃって。


「あるよ。昨日持って来た」


「やるじゃん!着替えといてな」


お盆を片付けに行ってしまう。


「…うん」


また、1人。


やだやだ。


いちいち考えちゃうのもいやだ。

「終わった?」

扉の向こうから、ノックとともに声がした。


大好きで、もう少しな、松木の声。


「…まだ」


いけない。


何ひとつ、動いてない。


早くしないと。


しないと、また、松木との時間が短くなる。


「ちょっと待ってよ!」


「おう。慌てんなよ」


そんな言葉は無視して、さっさと着替えて。


「おわった!」


おやつの時間の子供みたいにウキウキと言う。


「入るぞ?」


「うん!」


早く、早く。


惜しんでる暇なんてない。

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