私を惚れさせて。私の虜になって。
「よしっ!気合入れるよ!」


「………ん?」


扉の向こうは、なぜか松木じゃなくて


松木のお母さん。


「そのボッサボッサの髪を綺麗にしてあげるの!」


「あっ…」


「やりたい!髪結びたい!男ばっかだからもう何年やってないと思って!」


「あっ、…はい、お願いします…」


そこ座って!と勢いにタジタジになりながらも松木のベッドに座る。


「…あれ。松木のお母さんって美容師じゃなかったっけ?」


勉強机に座る松木に話しかけた。


「そーだよ」



「……ん?」


人の髪なんて、嫌になる程触ってるんじゃ?


「切ってるだけです私は〜」


あ、はい。


でもその分、手馴れてる感じ。


きっともう、こんな手の込んだ髪型なんて、出来ないんだろうな。


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