恋愛戦争
それからは案外簡単で、じゃあ帰るわと言えばまたね。と当たり前のように言われて玄関先で別れた。
俺はその帰りに不動産に寄り晶の隣の部屋を抑えた。
もうこうなったらストーカー決定。何もしていなくても犯罪である。何を平然と歩いているんだと驚くくらい、自分で自分が恐ろしいと感じた。
別に隣に住まなくてもいいけど、もし何かまたあったら、そう思ったらすぐに駆けつけられる距離にいたかった。
ひとりで泣いてるんじゃないかと、心配になった。と、言い訳と本音を並べた。
次の日にはいつもの美容院に行き、黒でお願いしますと言い切った。
「え?いいんですか?せっかく綺麗に金入ってるのに」
「いい女に黒がいいって言われたんで」
たったこれだけのことで、長年の金髪とおさらばした。
染められていく黒色に晶に気に入られるポイントが一つ増えたかもしれないと思い、ドキドキした。
中2かよ。
「晶!」
食堂で友人と席についていた晶を、同じく食堂にいた俺が見つけて、すかさず声をかける。
この頃になると、俺が美人を追いかけ回してるとは学内では有名で、大して目立つものではなくなっていた。
「ナツ?わかんなかったよ」
「どう?」
「うん、素敵」
伸ばされた指先が黒髪に触れ、そこから綺麗になっていく気がした。
「かっこいいね」
死ぬほど嬉しい。一生黒髪で生きる。