恋愛戦争
久々に入ったゲストルームに事務員がお茶と適当な菓子を置いていく。美味しそうなバウムクーヘンである。
「本当にすみません、お騒がせしました」
「いえいえっ!大方予想はつきます。南月がわがまま言ったんでしょう?」
「そうだよ、優しい晶がいいよって言うまで粘ったの」
「引っ越しの片付けは終わったのか?」
「終わってないから後で誰か呼ぼうかと思ってる」
「終わってないのに来ちゃうほど心配なんだな。はいはい分かったよ」
安藤さんは苦笑しながらノートパソコンと資料をテーブルの上に並べると、その内の一枚を俺たちの前に提示した。
仕事モードになった晶は自分のスケジュール帳とB4のファイルを取り出す。
「スタジオの候補なんだけど、2人のスケジュール的に抑えられて3日ってところです」
「え、そんなにもらえるんですか?」
「ファースト写真集となれば、南月にとっては最優先の仕事です。それでも一般よりは短いですね」
「準備片付け含めて3日ですか?」
「そういうことになります。」
「それでこの候補なんですね」
某有名スタジオが数カ所、既にその期間は仮押さえになっているのを見て、事務所の期待を感じた。
「あとは軽井沢なんですがホテルの部屋数がちょっと足りなくなりそうで」
「まぁ、難しい時期ですよね」
「ですので、近くのホテルも抑えておくので、最終的なスタッフ人数を後日教えていただいても?」
「ありがとうございます。確認次第メールしますね」
進んでいく会話に、待ったをかける。
「あー、俺と晶は同じ部屋でいいわ」
いいわけないだろう。という2人の真顔が俺を見る。