恋愛戦争
「口を開けばいい加減なことを言って…南月、外で遊んでこい」
「犬じゃねーから。それに真面目に言ってる」
晶のドン引きの横顔が目に入るが、これは曲げられない。
晶と朝も夜もご飯を食べる夢の日々をを数ヶ月前からスケジュールを抑えに抑えていたというのに、ここに来てどんでん返しなんてさせてたまるか。
俺は熱意を込めてプレゼンをする。
「同じホテルじゃないならダメだよ。ダメダメ」
「何がダメなんだよ」
「俺のモチベーションが下がる」
「はい、ダメー」
「そのダメがダメ。だいたい晶は俺を撮るんだよ?四六時中見つめてもらってなきゃ困る」
呆れ果ててものも言えないというのはまさにこのこと。
「週刊誌にバレたら困るのは晶さんだ」
「俺が悪者になればいいじゃん」
「女の敵は女って、よく知ってるだろ?」
軽井沢での撮影は5日間。その撮影が終われば俺と晶を繋ぐものは無くなってしまう。
せめてその期間だけでも長くいたいと下心満載でアピールをする。
ちらり、晶と目が合う。
同じように俺を見つめていた晶が口を開く。
「わたしカメラマンだからナツのこと撮るだけだから。それ以上は違うよ」
どうしたら俺のことを好きになってくれるのだろうか。という漠然とした疑問と、度が過ぎたというただ一言が脳裏を横切る。
あー。今の言わなきゃよかったなぁと後悔しても後の祭り。
潔く謝る他にない。
「ごめん。わがまま言った」
「反省して」
「はい、反省します」
腐ったものでも見るような顔で見られて、戦慄。
ちょっと静かにしていよう。