恋愛戦争
それ以上が、一体何を指すのかが分かったからこそ怖いのは、今までのことは許してもらえるのだろうかということ。
家に行くのは?
一緒にご飯たべるのは?
車で出かけるのは?
今までよかったものができなくなれば、スタートラインはだいぶ後ろに下げられることになる。
また再会したときからやり直しだ。
今の俺にはちょっと耐えられない。
「ナツ、無理に仲良くしようとしなくていいから」
「そういうんじゃない」
「だとしたら、失った時間を短時間でどうにかしようとしないで」
「………わー……それはごめん」
「分かったらいい」
すみません、こんな話して。とまた頭をぺこっと下げた晶に習って、俺も下げてみた。
「いやいや、仲が良くてよかったです」
「いえ、そういうわけではなくて」
「お二人とも会話が楽しそうで、なによりです」
どこをどう切り取ったら楽しそうという結論に至るのか。甚だ疑問である。
独自の解釈でその場を乗り切ろうとしている安藤さんは、はい続きの話しますね。とまた資料を見返した。
スタジオでの撮影が先にあり、もうすぐに迫ってきている中で2人は淡々と話を進める。
撮影のコンセプトや、大筋は決まっているのであとは写真を撮るだけ。という状況なので焦りも感じられない。
なぜ自分の写真集なのにこんなに疎外感を感じるのだろうか。ちょっと悲しくなってきた俺は黙って2人の会話に耳を傾けていた。