恋愛戦争
それから2時間ほど話し合っていた2人はどうにか纏まったらしく、満足気な顔つきで事務所を出ることになる。
「なんで安藤さんまで駐車場くんの」
「晶さん送って行くからに決まってるだろ」
「晶と俺は同じマンションに帰るんだからいいの。俺が連れて帰る」
「お前は…撮られたらどうする?同棲なんて騒がれたら」
「そのくらいのスキャンダルあったほうが売れるって」
だいたい俺は真面目な好青年で売っていない。むしろ逆で女遊びが激しくてルーズで、まぁ不良。出始めが金髪だったこともありイメージが定着している。
「うーん。あ、じゃあ俺も同席するわ」
「は?それじゃダメだよ。晶と2人で帰ることに意味があるのに」
「だいたい引っ越しの片付け終わってないだろ」
「それはまた今度でいい」
「よくない、しばらく南月がまとめてオフ取れる日なんてないぞ」
「…………すげぇ嫌」
駐車場で、すでに車内に乗り込んで待っていた彼女はなぜか後部座席へと腰掛けている。
そのことも気に入らないのに。
なぜお前なんか。
と、心内で葛藤を繰り広げるもこれではさっきの二の舞。
「はぁ、わかったよ乗って」
「お!いい子じゃん」
「ハゲ」
俺の暴言ににっこり笑った安藤さんは問答無用で助手席に乗り込むと、バックミラーで頭皮を確認していた。
公道に出ると安藤さんが後部座席を振り返る。
「晶さんは南月でいいの?」
おいおいおい、今の段階でそんなこと聞くんじゃねぇよ。
案の定、困惑した顔をミラー越しに確認する。
ぱちりと目があって、首をかしげる。
どういうこと?と言わんばかりの表情を浮かべている。
「あの、いいもなにも、そういうのじゃなくて、たぶん」
「ん?そうなの?南月の片想い?」
俺に振り返る安藤さんは興味津々といった嬉々とした表情で、ムカつく。
「うるせーよハゲ。そうだよ片想いだよ」
「ほーーー、すげぇ。それでストーカー化してしまうとは」
信号待ちで振り返ると、ドン引きした晶の顔とかち合う。
「いや、引くなよ」
「ナツって私に片想いしてるの?」
「え、うん」
「やめてやめて、今ならまだ間に合う」
「間に合わねーよ」
「いや困る」
最早、片想いすらも拒絶される。