恋愛戦争



「は、今のずるくない?」

「撮ったもん勝ち」



そんな勝負した覚えないんだけど。昌に向けたデレッデレの阿保面が全国に販売されると思ったら恥ずい。昌だけの俺の笑顔なのに。


なんて言ったらキモイと拒絶されるので黙って顔を作るとカメラから顔を上げる。



「その顔やめてください、南月さんの知ってるベストな顔は世間ではブサイクです」

「いや、そんなはずはない」

「今のその顔がかっこいい」

「今どんな顔してる?」

「は?って顔してます、素敵」



と言ってまたシャッター音が鳴る。




「あんまりオフってる顔撮られたくないんだけど」

「どうして?」

「仕事とプライベートを分けたいタイプ」




今度は晶が顔をしかめる。お前が言うなと言わんばかりに綺麗な柳眉が寄る。



それにまたほくそ笑むとまたシャッターを切られた。



ああ、もう。


確かにこれは俺の写真集の撮影であって、俺を売るための商品にするためなのだから晶のように他人が評価した結果が大事なことは分かっている。


だがしかし、やられっぱなしのようでむかつく。


仕返しに晶が素敵という笑顔のまま、音を出さずに唇を動かす。



ス・キ


シャッターを押していた指が止まって不機嫌そうな顔を隠しもしないで俺を睨みつけてくる。




「ぶっさいくな表紙にしてやる」

「イケメンには無理難題だな」




視線の先に新しい衣装を持ったスタイリストが見え、入り口には大きい台車に缶に入った絵具を運んできたのも見えた。



南月さん衣装はいりまーす。



その声が一時休戦の合図となった。






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