恋愛戦争
ーーーガタガタと音が聞こえて数秒。寝室の扉が開いた。
寝起きの乱れた髪がさらりとゆれて欲情的だなぁ、と心の中で感想を述べると何の遠慮もなく隣に腰掛けた彼女。
「オレンジとりんご、どっちがいい?」
「んー、オレンジ」
「はいよ」
晶が気に入っているアンティーク調のソファーがら立ち上がると、1人分の重さが浮いてバランスを崩した寝起きの彼女がパタンと横になる。
なんだそれ、可愛いすぎだろ。
特に気にした様子もないので横目で見つつ、買っておいたジュースを冷蔵庫から出してグラスに注ぐ。
「ん」
「ん、ありがとう」
同じものを飲みながら寝ている晶に渡すとのそのそと起き上がり受け取る。
空いたスペースに先ほど同様に腰を下せばゆらゆら揺れて危なっかしいことこの上ない。
「晶、あんまり無防備にしてっと食うぞ」
「ナツはそんなことしないでしょ」
「……まぁね」
『ナツ』とプライベートだけで呼ぶその名前を不意打ちに食らって心臓揺れる揺れる。
本当なんなの、計算なの、ありえないんですけど。いつもはなかなか抜けない敬語もないし、寝起き最高。
「お腹空いた」
「何食べたい?」
「なんでもいい」
「うわー、結婚したら一番言われたくないやつー」
「結婚しないからいい」
それはだめなんて言えるはずもなくスルー。まぁ付き合えてもないんだけどね。
「そういえば、また最近メシ抜いてるよね」
「………監視してるの?」
「したくても出来ないよ。1週間前より細くなってる気がするんだけど」
「気のせいじゃない?」
気のせいじゃねーよ。とは言わず折れない晶に今日は食べささようと決意する。
「適当に作るけど残すなよ?」
「ナツが作るの?じゃあ残さないよ」
なんなのなんなの。本当なんなの。わざわざ言うなよ。いや、うん、嬉しい、にやけ止まらない。