恋愛戦争
撮影は順調に進み、初日ということもあり少し巻くことができた。
最後の撮影は晶にこれやって、とギターを渡されポロポロと知ったかぶりの手つきで弾いて終わった。晶は特にカメラを構えず、保存用のビデオだけが回っていた。
「俺、ギターできるなんて言ったっけ?」
「言ってませんよ。南月さんならできそうだなぁって思ったんです」
「ふーん、ねぇ、一緒に帰ろ」
「誤解を招くような発言はやめてください」
「誰もいないからいいじゃん」
楽屋で2人きり。
安藤さんがスタッフとスケジュール確認をしている間に、晶を楽屋に連れ込んだ俺は早々に着替えを済ませ絶賛口説き中。
胡座をかいた膝の上に先ほど使用したギター乗せて小さく奏でる。
「今日の夜ご飯俺が作るから」
「……本当?」
少しの間の後にちょっと嬉しそうに口元を綻ばせた晶が可愛くて可愛くて。
「うん、本当。なんでも作ってあげる」
「じゃあね、オムライス」
「朝ごはんキッシュだったけどいいの?卵かぶりじゃん」
「あ、じゃあ、なんか美味しそうなやつがいいなぁ」
「広範囲だな、了解」
「やった、楽しみにしてるね」
椅子に腰かけた晶は両手を座面の淵に掛け、足元を浮かせてパタパタと揺らす。
無意識な子供っぽさが可愛い。