恋愛戦争
先程までの圧倒的な熱量の艶っぽさはなんだったというのか。
簡単に踏み込ませる癖に肝心なところは誰にも見せない晶はずるい。
そうわかっているのにズルズルと沼にハマるように晶から目を離せず、抜け出せなくなる。
「あれか、晶って魔性の女か」
「へ?急になに?」
「納得だな」
「何なに、なんのこと」
意味わかんない。とひとりごちてまた足先を揺らすのを音を奏でながら見てると控えめにドアがノックされる。
「南月ー、お待たせそろそろ行こうか」
「はーい」
「晶さん楽屋にいないんだけど知ってる?」
そう言って、入ってきた安藤さんが顔を上げると、俺の前にいる晶と目があって、2人して申し訳なさそうな顔をし合う。
「すみません、お邪魔してます」
「いやいや、こちらこそ南月に付き合ってもらっちゃってすみません」
どいつもこいつも保護者かよ。
「はいはい、そういうのはいいからさっさと帰ろー」
立ち上がってギターを片手に楽屋を出ると丁度スタッフがいたので手渡す。
「お疲れ様です、また明日よろしくお願いします」
俺の声に反応して端々から挨拶が聞こえる。それに出来るだけ応えてさっさと帰宅の準備を済ませた2人と駐車場へと向かう。
エンジンがかかった車の中へ乗り込むと、すかさず声が飛ぶ。
「ナツは助手席じゃないの?」
「南月は助手席だろ」
うるせーよ。気分だよ気分。とは言わず黙って後部座席へと落ち着けた。
仕方なさそうに隣に座って距離を保つ晶は可愛いし、真ん中に機材置いて警戒心丸出しなのも可愛い。
進行した車の中、一番に口を開いたのは安藤さん。