恋愛戦争
バックミラー越しに格好つけて晶を呼ぶ。なんかうざいけど黙って俺も晶を見つめる。
「一応送る旨を品川さんに連絡しておいたんですけど何か連絡来てます?」
「確認します、ちょっと待ってください」
鞄の中からスマホを取り出すと画面が光り、夜を走る車内でよく目立つ。
「あ、来てました。お疲れ様、安藤さんによろしくお伝えください、とのことです」
「了解です。責任持って送り届けますね」
「キモいよ」
信号待ち、振り向いてガッツポーズをした安藤さんが気持ち悪くて、思わず後部座席を蹴った。
「てか、品川さんに一々報告いらないでしょ」
「晶さん預かってるんだから連絡ぐらい当然だろ」
「なにそれ、預かるって、晶は品川さんのものじゃないし」
「そういう意味じゃないし、理屈ではお前もわかってるだろ」
発進する最中にまたバックミラー越しに言われて、なんかムカつく。とりあえず蹴った。
「ちょ、おい南月お前さっきからめっちゃ蹴るけどこれ汚したら社長に怒られるの俺だから!」
「ざまぁ」
呆れた顔を隠しもしない晶は品川さんに向けて返信しているのだろう。
脳裏には数回会ったことのある、彼女の事務所のマネージャーを思い浮かべる。
数回間の打ち合わせに来た品川という彼に、躊躇なく警戒心むき出しで威嚇をした俺はその男が心底嫌いである。
基本、カメラマン本人と事務所で仕事を請け負い事務がそれらの仲介をするシステムだった晶の会社は、ここに来て体制を変えた。
知名度、話題性で世に知れ渡った晶の名前を守るために事務所が取った防衛対策の1つ。
仕事を管理し、身の安全の確保をする。元々タレント売りする気など毛頭ない事務所の晶への今後の期待と、単純な愛で決められた配分だ。