恋愛戦争
テレビをつけて晶の近くにリモコンを置くとパチパチと適当に回し、気に入ったものがあったのか大人しく膝を抱えて丸まった。
こうなったら暫く放置しても拗ねないから夕食づくりに勤しむことにしますか。
手を伸ばしてアッシュブラウンをわしゃわしゃとかき乱すと無言の抵抗。それでも嫌だと言わないあたり機嫌はいいらしい。
好き嫌いが多い晶は、機嫌が悪い時に嫌いな野菜を出されると次に一緒に食事をするまで1ヶ月はかかるので要注意。
何事も確認が大事である。
背もたれにかけてあったブランケットを渡すと小さく頷きくるまった。
「猫みたいだな、またたび買っておこうか?」
「はいはいにゃーん」
「可愛い可愛い」
キッチンに向かえば再びドサッと彼女が横になる音が後ろから届いたので、対面式キッチンから見たら想像通りの姿で笑みが浮かぶ。
「笑ってるでしょ」
「ばれた?ごめんかわいくて」
「軟派男」
「晶ちゃんにだーけ」
はい無視。もう慣れてるけどね。
ずっと家が近所で、小さい頃から幼馴染だった俺らは必然的にいつも一緒にいることが多かった。
しかし、高校生という多感極まりないお年頃の時期に運悪く離れてしまった為にできた心の隙間は何年経っても埋まらない。つらい。
知り合いに誘われる形でモデルの世界に足を踏み入れて、色々な人間と知り合った。
それから、晶に逢った。
昔から変わらない凜とした背中を思わず抱きしめたときが懐かしい。まぁ、すぐに殴られたんだけど。
と、俺が思い出に浸っているにも関わらずソファーの猫から泣き声が飛んでくる。
「豆乳パスタ食べたい」
「胸ねーもんな」
「ナツよりはある」
俺と比べんなよ、と聞こえる程度に呟くも猫は無反応。
まぁいいや。パスタね了解でーす。この、晶ご要望の豆乳パスタとは食に関心がないガリガリ晶ちゃんの為に俺が考案したスープパスタである。
晶が好きな豆乳と細かく刻んだ野菜をパスタに絡めるとまぁ絶品。
初めて食べた晶はすっかり懐いて(飯に)俺の料理が大好きになった。と、俺は解釈してる。