恋愛戦争
「ごちそうさまでした」
「美味しかった〜」
ネクタイを緩めてだらしなくソファーに寄りかかる安藤さんは泊まっていこーかなーなんて戯言を呟く。
「はいむり〜、帰って、俺今から晶と二人きりになって落とすから」
「んなこと聞いてやすやすと二人きりにするわけねぇだろ、晶さん行きましょう」
食事を終えて再び睡魔に襲われ始めていた晶さんハッと気づく。
「あ、はい、帰る」
「……ッチ」
小さく悪態をついたのを目ざとく咎めてくる安藤さん。
「当たり前、お前は距離を踏み間違えるな」
「随分、大人じゃん」
「お前よりだいぶな!」
立ち上がった晶はノロノロとスローペースで荷物を拾い上げていくので、横から掻っ攫っていく。
疲れていた表情だった晶の顔色が幾分か良くなっているので、今日の所は仕方なく帰す事に賛成しよう。
隣の部屋に荷物を持っていき、無事に晶の帰還を確認。
「ナツ、今日はありがとう」
「何が?」
「ご飯も、撮影の時も、全部嬉しかった」
「うん、俺も晶が嬉しいのが嬉しいよ」
「…….ちゃんとお風呂はいって寝てね」
「晶もね」
「……ねぇ」
「ん?」
「…あの時も、ありがとう。また明日ね、おやすみ」
晶の小さな手が、俺の手を掴み、ぎゅっと握るとまた離された。
まるで色んな思いを込めるかのようなその行為に胸がどきどきした。けれども、伝えたい思いがわからなくて、一瞬のうちに靄がかかる。
「うん、また明日。おやすみ」
晶の髪を撫でてから、扉を閉めた。