恋愛戦争
温まった身体に安藤さんが買ってきてくれた新品のスウェットに身を包む。
そこにタイミング良く入ってきたのは安藤さんで、ちょうど欲しかった冷えたミネラルウォーターをくれた。
「なんでニヤニヤしてんの?」
隠し事ができないタイプの彼は聞きたい?とうざったく聞いてくる。
「言いたいなら言えば?」
「冷た。明日軽井沢に晶さんと前乗りする?って聞きに来たのに」
「行くわ」
「おい、態度な」
「行きたいです」
「よし」
どうやら主役2人はオフ、とまでは行かず先に前乗りして下見をするらしい。
それもそうだ。2人とも忙しすぎて下見もろくにできずにロケ撮に挑むことになっていたから。
もちろん目星をつけてある程度の施設やロケ地は抑えているものの、いつだってトラブルやハプニングはつきもの。
「晶は休まなくていいって?」
「晶さんが先に見に行きたいってさ。最初は一人で行くつもりだったみたい」
「は?品川さんは?」
「明日はどうしても東京に残らないといけなくて、だから俺にその話が流れて来たんだよ」
「なるほどね」
やるじゃん、安藤。
「イェーイ。じゃあ早く帰って寝よーっと」
「今車回してくるから」
「はーい」
身支度をさっさと整えて楽屋を出る。すれ違う人たちにお疲れ様でしたと声をかけていると、入り口で同じように車を待つ晶がいた。
「あーきら。今帰るの?」
「うん、品川さん待ち」
「ふーん。同じ家に帰るのにね」
「その話は終わってるでしょ。それより、明日ごめんね。せっかくオフになったのに」
同じくスウェットに着替えてる晶はオーバーサイズの袖を指先でひっぱりながら、ちらりと見上げてくる。
「いや、俺も先に前乗りできるならそっちのほうが身体が楽だから」
「ほんと?でもいいからね、あわせなくて」
「俺が行かなかったら一人でいくんだろ?」
「……うん」
どうしてこんなに可愛い女の子をは一人で旅に出せようか。無理だ無理。
「なんか美味しいもん食べて、温泉にでも入ってデートしようか」
「デート?しないよ、もう」
伸ばした袖口に口元を埋めて俯く。
嬉しそうに笑った横顔が可愛かった。