恋愛戦争
それから約2時間。と観光シーズンでもないので混むこともなく順調に進み予約していたホテルに到着した。
時刻は午後1時。とりあえずチェックインを済ませて各々の部屋へと入り、荷ほどきを済ませたのちにまた落ち合おうというと流れになった。
早々に部屋に入った俺は鞄を開けてとりあえず全部出してテーブルに並べる。
うん、これで3泊過ごせる。足りなかったらどっかで買えばいいし、うん、もう晶のとこ行こう。
「あきらちゃーん」
チェックインの際にしっかり晶の部屋の番号を暗記したので迷わず来たそこは同じ階の3つ隣の部屋。
秒速で来れる距離に晶いないと俺死ぬ病気なのかな。そうじゃなければこんなに近距離にいつもいるわけない。
「早いね、ナツ」
「一刻も早く晶に逢いたくて鞄から荷物引っ張り出して終わった」
「えー、それ後で大変じゃない?必要なものないってなるよ」
「いいの、晶のとこくるから」
ベッド、簡易のソファーセット、大きなドレッサー、バスルーム、クローゼット。俺の部屋と大体同じ作りのそこは未開拓のまま。
それもそうだろう。荷ほどきの間を与えないほど早く来てしまったのだから。気持ちがはやってしまう中2思考な俺。
「荷ほどき手伝おうか?」
「ううん、そんなに入ってないから大丈夫だよ」
そう言ってキャリーケースを横たえフローリングに広げる。綺麗に仕舞われている荷物。ぱっと見確かに荷物は少ないようだ。
「ね、後で足りないものあったら一緒に買いに行こーよ」
「ほんと?今丁度靴下持ってくるの忘れたなって思ってた」
「可愛い、何足でも買ってあげる」
「もう、ナツはいったい何人にそういうこと言ってるの」
「晶ちゃんだけ」
「うそつき」
ソファーに座る俺の目の前に立つと、彼女はその指で額目掛けてぱちっと可愛くデコピンをする。
「悪い子にお仕置き」
「そんな可愛いお仕置きなら甘んじて、むしろ積極的に受けにくるわ」
「バカナツ」
本気で怒ってくれているのだろうか。まるでヤキモチのようなそれに、調子に乗りそうになる。悪い子はどっちだよまったく。