恋愛戦争
「わぁ!可愛い!」
店に着いてすぐ、建物の外装を見た晶は今までに見たことないくらいはしゃいでいた。
「後で許可貰ったら撮ってもいい?」
「いいんじゃない?聞いてみよっか」
「うん!」
洋風の建物はペンションとして宿泊者に貸し出しており、一階の部分を喫茶店として使っている。
芝生と花だらけの道の中、切り開くように置かれた石畳を歩くとようやく扉にたどり着く。
ーーーカランコロン。
小気味いいドアの音の後に広がるのはカウンター式のキッチンと、広いテーブル席。それと、至るところにある花がよく目につく。
「うわ、すげぇいい匂いする」
花の匂いだろうか、それとも漂う食事の匂いなのだろうか。甘い蜜のような香りが漂う空間はただただ居心地がいい。
彼が気を利かせてくれていたのであろう、扉にはクローズの表札が出ていたので店内に客はいない。
いるのは、ただ1人。
店の奥から花瓶に生けた花を持ってきた彼はいつ会ってもふわふわと掴めない笑みを浮かべている。
「とーるちゃん」
「あ、南月来たんだ」
「うん、遅くなった」
「いいよー。そろそろかなって思ってたから準備しといた」
「ありがとう」
カウンター越しに会話する彼は葛城徹という名前の、父の弟、いわゆる叔父に当たる人物である。
彼は後ろに立つ2人に目を向けてこんにちわーと挨拶をすると座るように促す。
「こっちが晶ね。前に話してた今はカメラマンしてる」
「あー、晶ちゃんか、想像よりずっと綺麗な子だね」
「はじめまして瑞木晶と申します。あの、ナツから何か伺ってるんですか?」
「ちょっとね。で、こちらは?」
「俺のマネージャーの安藤さん」
紹介された安藤さんは一度立つと名刺を差し出して、頭を下げる。
「南月さんのマネージャーをさせて頂いております。安藤と申します」
「わ、丁寧にありがとうございます。すみません名刺とか用意してなくて」
「いえいえ、こちらこそ押し付けがましくすみません」
大人な会話をし始めたと思ったらとーるちゃんはまたふわっと笑う。
「南月がいつもお世話になってます。この子大変でしょう?わがままで」
「それはそれはもう手を焼いてます」
「おい」
くすくす笑う彼らは俺で遊んでいる。解せない。