恋愛戦争
「いつからそんな悪い子になったの」
耳に吹き込むように喋りかけたのがくすぐったいのだろう。ぐりぐりと頭を肩口に押し付ける。
「くすぐったいよ」
「じゃあこれは?」
桃色が差す頬に、恥じらいに瞳が少し濡れて、全てを俺への信頼に預けているから、俺だって男だよと示したくなる。
綺麗なカーブを描く耳の輪郭に歯を立てる。
「や、ナツ!」
「驚いた?」
「心臓が止まるかと思った」
「そんなに?」
びっくりして身体が跳ねた晶が可愛い。じゃあ、これはどうなのだろう。興味と期待を込めて、耳の窪みを舐めてみる。
「わ!ナツやめて!」
子供のじゃれあいのように騒ぐ晶を無視して、わざと音を立てて首筋を抑えてしまえば困り果てたように動きが止まる。
今はまだ超えてはいけないラインが目の前まで迫って来ていることはよくわかっている。もう、そのラインにつま先が付いている。
いっそこのままなし崩しにしてしまえばいい。そんな考えも浮かぶ始末。
わざと音を立てたそれは淫靡な雰囲気を作り出していて、今さら何もなかったようにすることもできない。
だから、ごめんね。
ぐっと頭を引き寄せて耳の後ろの生え際に唇を押し当てて、わざと強く吸う。濡れた肌には鮮やかな赤。
「晶、明日髪下ろすなよ」
「え?もしかして今何かしたの?」
「いいから、な?」
少しだけ身体を離して覗き込んだ彼女の濡れた瞳をみてドキッとした。やばい、食い荒らしたい。
俺の中の凶暴な雄が牙を剥く。