恋愛戦争
もういっそ、身体だけでもいいから。なんて俺史上最低の考えが浮かんで、ぐっと奥歯を噛み締める。
それなのに、彼女は無邪気な子供のようが遊びに誘うように悪戯に男を試す。
「もうキスはしないの?」
「……したい?」
「したいよ、さっきからずっと」
我慢なんて、馬鹿みたいだと思った。息を吐き出すように素直に言われたその言葉には何も敵わない。どくん、と脈を打つ音が大きく聞こえる。
「じゃあ、晶がしてよ」
我が儘をなだめるように言うとチラリと見上げ唇を噛み締めた。恥じらいはたっぷりあるらしい。
「いじわるナツ」
なんだそれ可愛すぎだろ。背伸びして不安定な感覚のままぶつかってきた唇が愛おしくて、噛み付いた。
噛み付くように、慈しむ。
驚いて、背伸びしたままの彼女を唇をつ繋いだまま抱き上げてすぐ後ろのベットに押し倒す。
「ん…っ」
鼻から漏れる吐息が扇情的で誘われているようにしか思えない。
閉ざされた唇をこじ開けて歯列をなぞり逃げる舌を捕まえる。
温かい口腔内で性急に行われるキスに熱が上がって上がって上がる。
晶はもう息が上がっていて、唇が離れた瞬間にだめだめと首を振るが、それを追いかけてまたふさぐ。
追い詰められて思考回路がショートしてしまえばいい。冷静なんて取り去って、興奮で荒れてしまえばいい。
「逃げんな」
逃げる身体を捕まえて両手を繋いで上から押さえつけると、観念したかのように今度は必死についてこようと呼吸の狭間を探す。
「ん、上手」
褒めると、恨めしそうな視線が涙越しに見える。生理的なそれが目尻を伝い流れていく様に興奮を煽られる。
チュッと、静かなリップ音で彼女を解放する。はぁはぁと胸が上下する荒い呼吸は目に毒だ。
「はぁ…俺どうしたらいい?もうおさまらないんだけど」
色々とね。
唾液で濡れた晶の唇を指でなぞりながら少しの期待を含めてそう問えば、息の整わない彼女は静かに頷いた。
「それってさ、これ以上していいってこと?」
まさか。俺はそんなことできない。自分で聞いといてこんなに答えが分かりきっている質問はあるかと虚しくなる。