虹をみつめて…。



外は11月だから風が冷たかった。



「ごめん、中でちょっと話そう?」


『あっ、うん』





なぎは寒そうに肩を摩りながら、病院の待合室に入った。


薬をもらいに来ただけだから、もう帰ってよかったのに…




「私ね、胃癌なんだ」

『えっ…』




なぎは笑っていたけれど、その瞳の奥にはきっと…




「ごめんね…、今日初めてあったばかりなのに」


『うぅん…』


「話相手が欲しかったんだ…。
彼氏には心配させたくないから…」




彼氏…。


その彼氏も災難だな。


こんなに可愛い子が、突然いきなり癌だって言われたんだから。


病院には病名を告げられ、末期とまで言われた人なんてたくさんいるに違いない。


その人の傍らには家族、友達、恋人までいるんだ。


一番、自分が心配をかけたくない人が…


病院は嫌いだ。


病院独特の臭い…

それに病院にいる人達には笑顔が少ないんだ。

自分はいつ死ぬのかと毎日思っているのかな。




「これから抗がん剤治療で髪は抜けちゃうんだって。
そんな自分彼氏には見せたくない。」




自分の髪を触って俯いた…


辛いよな…。


俺がなぎの立場でも嫌だ。


好きな人になんて…




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