恋の定義──そして今日も、君を想う──
「高梨先輩。」

理科室を出た時、呼ばれた声に振り返ると、笑みを浮かべた後輩の水野がいた。

「先輩、電車ですよね。駅まで一緒に帰りましょう。」

「…うん…。」

レナの横に立つと、水野はレナの歩幅に合わせて歩き出す。

写真部の活動のことや文化祭に展示する写真のことなど、他愛もない会話をポツリポツリと交わしながら歩き、駅の目の前まで来た時。

「最近、片桐先輩と一緒じゃないんですね。」

「……。」

中学時代からの二人を知る水野が、不思議そうにレナに尋ねる。

同級生から尋ねられることはもうなくなっていたことだが、改めて水野に尋ねられると、レナは返事に困ってしまう。

「彼女が、いるからね…。」

レナが呟くと、水野は驚いたようにレナを見る。

「そうなんですね…。僕はてっきり…。」

二人が付き合っていると思っていた、と言う一言を、水野は言おうとしたのだとレナは思った。


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