心掻き乱れるほど恋い焦がれて


「…綾奈?」
「翔太はもう、私のことなんて好きじゃな……んっ!」

キリキリと痛む胸を堪えながら吐き出す言葉は、全てを言い終える前に翔太によって封じ込められた。
噛み付くような勢いで塞がれた唇の隙間から、翔太の舌が荒々しく捩じ込まれて、驚いて逃げようとした私の身体は、翔太の手が腰に回って逃げ場を失った。




「………ンッ……」

時折零れ落ちる甘い吐息さえも奪うように、角度を変えながら深く舌を絡められる。
感情を剥き出しにしたこんなキスは久しぶりで、それだけで身体の奥の方が熱を持ったように熱くなった。




「お前、結婚なんて考えてないって親に言ってたから…」

くちゅ、っといやらしい音を立てて離れていった翔太の唇が、思いもよらない言葉を紡ぐ。
顔を見たくて身体を離そうと胸に手を突くと、力任せに抱き締められて、頭の後ろを翔太の大きな手が包み込んで肩口に押し付けられた。





「俺はさ、いつかは、って思ってたのに……綾奈にその気がねぇんじゃ無理強いもできねぇし……別に結婚しなくてもお前が傍にいてくれんならいいかって、無理矢理納得した、つーか……なのに見合い写真とか、冗談じゃねぇよ」

口調は荒いのに、私を抱き締める翔太の腕は優しくて、さっきとは別の意味で胸が詰まった。




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