心掻き乱れるほど恋い焦がれて
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「俺たち結婚することにしました。ご両親が大切にしてきた以上に、俺が綾奈を絶対幸せにします」
週末にうちに来た翔太が、そう言って両親に頭を下げた。
私の言葉にショックを受けていたなんて微塵も感じない、自信に満ち溢れた態度で。
元々翔太のことが大のお気に入りの妹は翔ちゃん翔ちゃん、と大興奮で。
それよりも何よりも、こんなにカッコイイ息子ができるなんてどうしましょう、と興奮している母親にちょっと引いてしまった。
作戦成功ね、と妹に耳打ちしていたのにギョッとしたけど、そこはもう、気づかぬフリで遣り過ごした。
一緒に暮らすマンションに戻って、父親と酒を酌み交わす横顔に惚れ直したって言ったら、ニヤっと口角を上げて意地悪な笑みを浮かべた翔太に、その日は明け方まで放してもらえなかった。
次の燃えるごみの日に、翔太がこっそりDVDをまとめて捨ててるのを見て、嬉しかったから次はサービスしてあげようと思ったってことは、私だけの秘密にしておこうと思う。
**おわり**