風に恋したキミと
すると、電話越しにクスッと笑う桐島の声がして
「あぁ」
という声が聞こえてきた。
その瞬間、わたしもうれしくてなんだかクスッと笑えてきたんだ。
外に視線を向ければ、綺麗な茜色に染まる空。
太陽は少しずつ姿を消し始めていて……
反対側からはこっそり月が遠慮しながら顔を出している。
そんな何の変哲もない日だけど、わたしと桐島にとっては同じ陸上部の部員から恋人に変わった特別な日。
それを知っているのは朝からずっとわたしたちを黙って見ていた太陽だけ。
「あとね、桐島の走ってるとこが一番好き」
「サンキュ」
これがわたしたちのはじまり。