風に恋したキミと
それはトップの選手がラスト1周を切った合図。
わたしの耳にはその選手の息遣いまでは聞こえないけど、タッタッとリズムよく足を進める音は聞こえる。
この風の中走るのは、誰だって辛い。
自分だけじゃない。
勝つためにはいつもよりも早くラストスパートをかけなくちゃ。
わたしはいつもゴール手前200mからラストスパートかけるけど、今日は300mからかけることにした。
よしっ!ここからゴールまで全力ダッシュだ。
もう、それしかあの人に勝つ方法はない。
負けたくない。負けたくない。
頭の中は走るのが辛い。呼吸するのが辛いってことは“負けたくない”って気持ちの二の次だった。