風に恋したキミと
「時計で上から計ってたら9分57秒だった」
見ろよと言いながら、見せてくれた桐島の腕時計にもわたしのタイムはさやかと同じ9分57秒と表されていた。
「桐島も計ってくれてたんだ。ありがとう!
これで後で正式タイム観に行っていつもと同じ10分台だったらどうしよう!なんてね。
桐島も10000頑張ってね!」
「あぁ」
スパイクの袋を肩に掛けて歩き出した彼にもう一度『頑張れ』と心の中で言うと、わたしはまたスタンド席に向かって歩き出した。
次は本番の大会。
10分を切れればおそらく顧問の橋本先生も3000mに選んでくれる。
タイムはまだ出てないのになんだか自信を持てたわたしは本番までに足を治して、今度こそ万全の態勢で臨めるようにしようと心に決めたんだ。