風に恋したキミと
柚里は襷を肩から取ると、両手でわたしに向かって「莉桜、お願い!」と言って渡してきた。
わたしは何も言えなかったけど、襷を受け取って走り出した。
本宮高校と襷が渡った瞬間は大して変わらない。
あとは全部わたし次第で今日で終わりか、京都の全国大会が行けるかが決まるんだ。
右肩に襷を下げると、本宮高校の選手を気にかけながらもゴールの競技場に向かって走る。
最初からペースを上げていく選手なのかわたしを抜いて前に躍り出た。
沿道にいる観客の人たちは新聞社からもらった旗をもらってヒラヒラ振りながら「頑張れ~!」と応援してくれる。
そして走っているのに集中しなきゃいけないのは分かってるんだけど、観客の人たちの後ろからわたしと同じくらいの速さで走っている人が見えた。