風に恋したキミと
そして、今度はわたしも陸上部のLINEと競技場の電光掲示板に表示される最新情報を見ながら7区の上村先輩が帰ってくるのを待っていた。
3区の園田先輩も、4区の今井くんも、5区の寺内くんも、6区の小早川くんもみんなトップをキープし続けてアンカーの上村先輩に襷が渡った。
あとはこのまま上村先輩も他の学校の選手に抜かされることなくここまで来てくれればいいんだけど……
競技場に1番に入ってきた選手は……上村先輩じゃなかった。
上村先輩が来たらどうやって応援するかまで、みんなで話し合ってたのに一気に沈黙の空気が流れて誰も何も話そうとはしなかった。
わたしたちは黙ったまま、ゴールに向かう1位の選手を目で追ってゴールテープを切る瞬間を見届けた。
そしてその選手はわたしたちの学校の独走を追い抜いて全国大会出場を果たしたヒーローになった。
どうして……どうして……上村先輩は来ないの?
みんなみんな心の中で何度も叫んでいたと思う。