風に恋したキミと
誰よりも速く走れるようになりたいのに。
今はこんなところで立ってることしかできない……。
「……っ」
わたしは両手掴んでた手すりを離して、トラックに背を向けた。
だめだ。これじゃあまた一人で落ち込むだけだ。
走れなくたって、筋トレをして少しでもロスを少なくしようと決めて立ち直ったはずなのに
このまま最後まで見てたら、またあの時の自分に戻ってしまう。
わたしはトラックに背を向けたまま、スタンド席から出て、腕時計に目を向けると
そろそろお父さんが迎えに来てくれる時間に刻々と近付いてることに気付いた。